腸内細菌学雑誌
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16 巻 , 1 号
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  • 光岡 知足
    2002 年 16 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2002年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    世紀の後半, 腸内フローラの研究が急速に進展し, 腸内フローラの検索・培養法と腸内嫌気性菌の菌種の分類・同定法が確立されて, 多くの微生物生態学的知見が集積し, 腸内フローラの宿主の健康や疾病における役割が明らかにされた.このように, 腸内フローラのうちBifidobacteriumのような有用菌を優勢にし, Clostridiumのような有害菌を劣勢にコントロールすることがきわめて重要である.このような腸内フローラの研究の進展が基礎となって, 機能性食品が登場した.機能性食品はその作用機構に基づいて, “Probioticsプロバイオティクス”, “Prebioticsプレバイオティクス”, “Biogenicsバイオジェニックス” に分けられる.プレバイオティクスは, 結腸内の有用菌の増殖を促進し, あるいは, 有害菌の増殖を抑制することによって宿主の健康に有利に作用する難消化性食品成分で, ラクツロース, スタキオース, ラフィノース, フラクトオリゴ糖, 大豆オリゴ糖, 乳果オリゴ糖, ガラクトオリゴ糖, イソマルトオリゴ糖, キシロオリゴ糖, パラチノースなどの難消化性オリゴ糖がこれに含まれる.多くのオリゴ糖は, 試験管内でBifidobacterium (B.bifidumを除く) により, また, Bacteroides fragilis groupEnterococcusによってある程度発酵されるが, C.perfringensEscherichia coliによっては発酵されない.オリゴ糖の摂取は, 腸内Bifidobacteriumフローラの増殖を促進し, その結果, 宿主の便性改善と腸内環境の浄化に働き, それによって宿主の脂質代謝も改善する.
  • 佐久間 慶子
    2002 年 16 巻 1 号 p. 11-19
    発行日: 2002年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    フラクトオリゴ糖 (FOS) が, カルシウム, マグネシウム, 鉄など, ミネラル吸収を促進する効果をもつことが動物実験において数多く報告されており, 近年ヒトの臨床においても同様の効果が確認された.本総説では, FOSのカルシウム吸収促進機構の解明について, 分子生物学的技法をもちいた業績を中心にまとめた.小腸はカルシウム吸収の中心的な場であると考えられてきたが, 太田らにより, 大腸特に盲腸が重要な役割をもっことが報告された.彼らの結論は, FOSによるカルシウム吸収促進効果が盲腸切除ラットでは減弱したことに基づいている.FOSのカルシウム吸収促進効果にはカルシウムの細胞間ルートによる移動と細胞の中を通過するルートとの関与が考えられる.細胞を通過するルートは複数の過程によって構成されており, さらに各過程にはビタミンDによって調節されるいくつかの因子が関わっている.そのうちの一つがカルシウム結合タンパク質のカルビンディンD9k (CaBP) であり, CaBP遺伝子の上流にビタミンD受容体認識配列も確認されている.さらに, FOSを与えたラットの腸管粘膜細胞について, CaBPタンパク質とmRNAの発現を調べたところ, FOSは小腸のCaBP発現を抑え, 反対に盲腸, 結直腸では発現を増加させた.タンパク質とmRNAが同様の変化のパターンを示したことは, FOSの効果がCaBPの転写レベルに働いていることを示唆する.さらに, CaBP発現がカルシウム吸収量とFOS摂食量とに相関して変化したことは, カルシウム吸収の促進には細胞間ルートとCaBPの関わる細胞を通過するルートとの両ルートが関わっていることを示している.その機構として, FOSの発酵によって生ずる有機酸が重要な要因としてカルシウム移動の両ルートを調節しているという仮説が提唱されている.しかしながら, 分子レベルの解明は未だなされていない.
  • 諸橋 富夫
    2002 年 16 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 2002年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    カルシウム (Ca) およびマグネシウム (Mg) は骨の構造または強度を維持する上で重要な役割をはたしている.ゆえに, これらミネラルの骨に対する作用について多くの研究が行われてきた.一方, フラクトオリゴ糖はミネラルの吸収を促進することが知られている.骨表面における骨量とミネラル (CaとMg) 量の増加がフラクトオリゴ糖摂取ラットで報告されており, この骨中ミネラル増加とミネラルの腸管吸収には有意な相関が観察されている.胃全摘出を行った動物では皮質骨および海綿骨両者の減少が観察される骨病変が知られており, この所見は老化による骨粗鬆症の所見と近似している.フラクトオリゴ糖の摂取によりこの骨病変を完全に予防することができた.上記結果は, フラクトオリゴ糖摂取により成長期における骨中ミネラル量が増加した場合, 加齢に伴う骨量の減少を予防しうる可能性を示している.もし, このようなフラクトオリゴ糖の作用がヒトにおいても認められれば, フラクトオリゴ糖は骨に対する有望なプレバイオティクスの一つと言えよう.
  • Patrick B. SMITH
    2002 年 16 巻 1 号 p. 27-29
    発行日: 2002年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    本論文は, GTCニュートリション・カンパニーが米国食品医薬品局 (FDA) に対し, 短鎖フラクトオリゴ糖 (scFOS®) が安全かっ自然なものであることを, 科学的手続きを通して証明したプロセスを概観したものである.今回の申請の結果, 食品原料としてのフラクトオリゴ糖はFDAによって「一般に安全と認められる製品 (GRAS) 」と認定された.また, このことによって, われわれの短鎖フラクトオリゴ糖は, 機能性食品原料としてより広く市場に認知され受け入れられることになる.
  • Mohammad JUFFRIE
    2002 年 16 巻 1 号 p. 31-34
    発行日: 2002年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    難消化性食物繊維のフラクトオリゴ糖 (FOS) の特長として, 高コレステロール血症, 病原性細菌の過剰増殖や結腸癌の予防および粘膜免疫反応の促進作用のあることが証明されている.善玉腸内フローラの主な機能は, 有害な細菌の増殖や感染から消化管を守ることである.Bifidobacteriumは揮発性脂肪酸を産生するが, これら脂肪酸は重大な代謝エネルギーとなるだけでなく, 消化管を酸性にし, サルモネラ菌, 赤痢菌, クロストリジウム, Campilobacter jejuni, 大腸菌など有害細菌の増殖を抑制する.反対に消化管環境で善玉腸内フローラが減少すると, 潜在的な化学変化が起こり, ウェルシュ菌や大腸菌など有害細菌が増殖する.このようなバランス崩壊の臨床症状の一つが下痢である.発展途上国で下痢は未だに小児の罹病と死亡の最大原因で, 5歳未満の小児症例数が13億件と推定されている.FOSは善玉腸内フローラの食物となり, 増殖を促す消化管の効果的な「肥料」である.腸内フローラが改善すると, 便秘や下痢が解消し, 大腸内の腐敗物質産生が減少し, 高脂血症の血清脂肪が改善し, 総コレステロール, 中性脂肪, 血糖値, 血圧が低下する.本試験より, FOSを与えた下痢患児で下痢の疾病期間がプラセボ対照群より短くなることが明らかになった (4.24日に対し2.62日).またFosを摂食した小児の糞は, 摂食しなかった小児に比べてpHが有意に低かった.
  • 原 博
    2002 年 16 巻 1 号 p. 35-42
    発行日: 2002年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    短鎖脂肪酸は, 大腸で作られる, 食物繊維や難消化性オリゴ糖からの発酵産物である.この発酵を行うのは, 腸内細菌叢と言われる大腸内に常在する膨大な数の微生物である.産生された短鎖脂肪酸は, 大腸で容易に吸収され, 肝臓や筋肉で代謝されてエネルギー源となる.短鎖脂肪酸の一種である酪酸は, 大腸粘膜でよく資化される, 大腸粘膜細胞の必須栄養素である.酪酸の欠乏は大腸の機能不全に繋がり, このような意味で酪酸は人の健康に不可欠なものと言える.短鎖脂肪酸は, エネルギー源としてだけではなく, 健康を維持する多くの生理作用を有している.すなわち, 水や, 欠乏しやすいミネラルであるカルシウムやマグネシウム, 鉄の吸収を促進し, 肝臓ではコレステロール合成を抑制, さらには, 大腸がんの発症を抑制する.酪酸は, 大腸の変異細胞にアポトーシスなどを起こさせ除去する.これらの短鎖脂肪酸がどのように作用するかは, ほとんど分かっていない.短鎖脂肪酸の研究は, 大腸発酵, ひいてはプレバイオティクスの生理的意味を解明するものである.
  • Keith A. GARLEB, Maureen K. SNOWDEN, Bryan W. WOLF, JoMay CHOW
    2002 年 16 巻 1 号 p. 43-54
    発行日: 2002年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    フラクトオリゴ糖は医療用食品に理想的な発酵性食物繊維源である.医療用食品の典型は液体であり, 多くはチューブを介して患者に給与される.チューブから給与される液体医療用食品は粘度が低くなければならない.フラクトオリゴ糖は可溶性であり, 栄養チューブに詰まらず, 製剤の粘度を大きく上昇させることがない.医療用食品にフラクトオリゴ糖を使用する理論的根拠として腸管機能の正常化, 大腸完全性の維持, 腸管定着抵抗性の回復, 窒素排泄経路の変化, カルシウム吸収の改善が挙げられる.腸管機能の正常化とは, 医療用食品を給与されている患者での便秘または下痢の治療もしくは予防を指す.フラクトオリゴ糖は結腸内の細菌による嫌気性発酵と短鎖脂肪酸の産生を介して大腸萎縮の予防や遠位潰瘍性大腸炎の治療に有用と思われる.またビフィドバクテリウム属の増殖を選択的に助ける, またはある種の病原微生物の増殖を促進しない環境 (例: 短鎖脂肪酸濃度の上昇, pHの低下) を作ることから, 腸管定着抵抗性の回復に役立っ.フラクトオリゴ糖の嫌気性発酵では細菌細胞の成長と結腸pHの低下が起こるため, 窒素の排泄経路が尿から糞に移ると考えられる.カルシウム吸収が改善されるのは短鎖脂肪酸吸収と大腸pH低下が関与するメカニズムを介するためと思われる.総合すると, 液体製剤との適合性と患者に対する数多くの生理的利点が, 医療用食品にフラクトオリゴ糖を使用する十分な根拠となる.
  • Francis R. J. BORNET, Khaled MEFLAH, Jean MENANTEAU
    2002 年 16 巻 1 号 p. 55-63
    発行日: 2002年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    短鎖フラクトオリゴ糖は, チコリー, タマネギ, アスパラガス, 小麦など多くの食用植物に含まれ, また工業的にショ糖から合成されている.これは直鎖フルクトースオリゴマーが重合度1~5で重合した糖グループである (オリゴ糖).短鎖フラクトオリゴ糖は大部分がヒト上部小腸で消化されずに結腸に達し, ここで完全に乳酸, 短鎖脂肪酸 (酢酸, プロピオン酸, 酪酸), ガスに分解される.酪酸は細胞増殖や結腸細胞の分化を調整するため, 最も注目される短鎖脂肪酸 (SCFA) である.このような栄養作用だけでなく, 酪酸には癌細胞の免疫原性を刺激する働きがある.短鎖フラクトオリゴ糖もビフィズス菌増殖を刺激するが, これら結腸内フローラは宿主の免疫系にかなりの影響を与える.小腸粘膜は免疫系で重要な役割を果たす生体内最大の免疫臓器である.消化管関連リンパ系組織 (GALT) は生体で独自の接触状態に従って主要な役割を果たし, 広範な抗原性物質や免疫調整物質に対抗する重要な防衛ラインを構成する.最近の動物モデルを使った所見で, プレバイオティクスやプロバイオティクスが酪酸や乳酸菌による直接または間接的な仲介を経てGALT応答を増進し, 消化管で健康増進効果を発揮することが証明された.またGALTは結腸腫瘍発生を防御する上で中枢的な働きをすると考えられる.腸内フローラはGALT応答を調整するだけでなく, 最近の動物モデルを使った所見によると, プレバイオティクスとプロバイオティクスが酪酸による直接または間接的な仲介を経てGALT応答を促進し, 消化管で健康増進効果を発揮することが明らかになった.現在, ヒト栄養研究の分野ではsc-FOSの結腸癌リスク低下がもたらす潜在的な健康増進効果にっいて活発な研究が行われている.動物モデルでsc-FOSは結腸内の酪酸濃度と局所免疫系エフェクターを増進し, その結果, 結腸腫瘍発生が減少した.本総説の目的は, GALTとそのエフェクターが結腸直腸癌の予防で果たす重要な役割を酪酸との関連において検討することである.これら二っの機能をsc-FOSが増進させることはわかっている.
  • 上野川 修一
    2002 年 16 巻 1 号 p. 65-70
    発行日: 2002年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    腸管免疫系は極めて精緻な生体防御機構である.侵入してくる病原菌から防御する機構と, 食品アレルギーの発症を抑える特異的な機能を有している.免疫グロブリンAは病原細菌の侵入を防ぐために産生され, 経口免疫寛容は食品アレルギーの発症を抑えるために誘導される.腸内細菌は腸管免疫系の機能に強い影響を与える.さらに, プレバイオティクスは大腸に生息している特定のバクテリアの活性化に貢献している.代表的なプレバイオティクスであるラフィノースは, アレルギー発症に関わる免疫グロブリンEの産生を抑制することが明らかとなった.
  • 薬物およびフラクトオリゴ糖の予防効果
    飯倉 洋治, 神谷 太郎, 上野 幸三, 養父 佐知子, 高橋 円, 遠藤 裕也, 三本木 千秋
    2002 年 16 巻 1 号 p. 71-75
    発行日: 2002年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    食物アレルギー患者の増加は著しく, その中に肝機能の軽度に障害されている患者がいる.しかし, この肝機能異常を食物が関与して起こっていると考える人は殆どいなかった.そこで, GOTの高い患者, 高くない人とに, 月刊蔵で代謝される安定同位元素をラベルしたメタセチンを投与し, 呼気ガス中に排泄される量を検討した.その結果, 肝機能の悪い人は排泄が悪く, 肝臓とGOTの高い関係がはっきりした.次に実際に食物アレルギーの個体が抗原食物を摂取した時, 肝臓でどのような変化が起こるかの検討を, 食物アレルギーモデルマウスで検討した.その結果, 抗原負荷3時間で肝臓に強い炎症性変化が見られ, IL-4, IL-6陽性細胞が有意に増加していた.この炎症性変化は補中益気湯で制御された.またFOSも炎症予防効果が見られた.
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