抄録
腸内菌叢は, 通性嫌気性および絶対嫌気性の細菌や古細菌の数十の属に及ぶ数百の菌種で構成されている.その菌数は1×1014を上回る.そして, 腸内容物の半分を占めている.宿主動物に生理的にあるいは免疫的な影響を与える.このことは, 以下の二つの考え方を支持している.1.腸内細菌叢は, 自然界で人間が生存するのに必須の器官である.2.ヒトは, 高等な動物細胞と細菌や古細菌からなる細菌叢の共生体である.このような考え方は, 21世紀に行われるヒトを対象とした生物学や進化論, 健康の推進, 病気の診断や治療に関する研究に重要な影響を与える.これらの研究の多くは, 分子生物学と遺伝学の手法により行われる.このレビューは, どのようにしてこのような技術を利用しわれわれの能力を高めてゆけば, 細菌叢の有用な影響を増強し有害な影響を抑えることができるかに主眼をおいている.