日本経営工学会論文誌
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原著論文(事例研究)
顧客要求による納期延期が発生する場合のPush生産方式とPull生産方式との選択に関する研究
中塚 昭宏
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2022 年 73 巻 2 号 p. 43-53

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抄録

本研究が対象とする建設資材の製造業者は,顧客である建設業者から受注した時点で要求される納期に基づき生産を計画し,実行している.ただし,建設作業の進捗は,当初の計画に対して,悪天候や人員の不足等の影響によって,遅れてしまうことがあり,建設業者は,建設資材の製造業者に対して,発注した時点の納期を延期して欲しいと要求することがある.建設資材の製造業者は,この要求を受け入れざるを得ないのが現状であることから,生産を完了してから延期後の納期迄の間,製造業者は完成品の在庫を保管することとなり,保管費用が増加するという問題が発生している.本研究では,この問題の解決のために,現状の生産方式(Push生産方式)とは異なる生産方式(Pull生産方式)の導入を検討する.検討にあたり,Push生産方式とPull生産方式とでは,どちらの方が在庫数の期待値を低減できるのかを判定するための数式(判定式)を解析的に導出し,数値検証を行った.また,本研究で示した判定式によって,生産方式の選択に影響を与える各要因(納期延期期間,需要分布,生産リードタイム,生産サイクルタイム,安全係数)間の関係性を明確にした.更に,本研究の判定式と既存研究で行われた数値シミュレーションによって示されている結果とを比較し,考察を行った.判定式によって,実務で一般的に使用されている表計算ソフトを用いるだけで,どちらの生産方式の方が在庫数の期待値を低減できるのか容易に算出できるようになった点は,事例研究として貢献できた点である.

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© 2022 公益社団法人 日本経営工学会
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