2026 年 77 巻 2 号 p. 85-93
高速道路トンネルにおける火災時の濃煙空間では,避難者の位置を広範囲かつ低コストで把握する技術が不可欠である.本研究は,この課題に対し,スマートフォンが発するWi-Fiプローブ要求を利用した新たな人流解析手法を提案する.提案手法は,プライバシー保護を目的に複雑化するMACアドレスのランダム化に対応するため,MACアドレスに依存しない6種類の特徴量を利用する.安価な機器の利用とリアルタイム性を確保するため,事前の大規模な学習を必要としない教師なし学習を適用し,モバイル端末の台数を推定する.提案手法の有効性を検証するため,実際のトンネルで避難行動を模擬した実証実験を行った.その結果,複数Wi-Fiパケットキャプチャを一定の間隔で配置することで,滞在人数の時系列変化を高い精度で可視化可能であることを示す.端末台数推定では,特に少人数グループにおいて先行研究のRSSI閾値ベースの手法を上回る精度を達成し,エリアごとの滞在人数が時間経過と共に移動する様子を時系列で可視化できることを実証した.一方で,大人数グループでは推定誤差が増大する課題や,実環境では歩行者自身の身体による電波遮蔽の影響で,実際の人数より少なく推定される傾向があることも明らかになった.