抄録
企業全体の業績を利益という単一測度で表わす場合, 業績の良さの尺度として通常用いられている"計画対実績差異"は, 常に適当な業績尺度であるとはいえない.その理由は, 計画に使用した基礎条件が実施時にそのとおり実現するとはかぎらないし, 計画値には策定時にバイアスがはいりうるため, 部分最適化を助長しうるからである.この欠点を軽減するため, 実績値に対比させる基準値として「実現した条件の下での最適行動によって得られたであろう利益」i.e.「最適利益」を用い, 両者の差異である「機会損失」によって業績の良さを表わす方法を提案する.さらに, この尺度を用いて部門業績測定を行なうためには, 「全最適利益」と「部分最適利益」, 「全機会損失」と「部分機会損失」という概念を導入する必要がある.2部門組織の場合, 二つの部門最適利益を考える必要があり, これに対応して四つの部分機会損失が生ずる.