抄録
幼児を持つ保護者を対象に, 幼児のう蝕罹患状況やう蝕予防の実態を把握し, さらに, 歯科保健に対する保護者の考え方や間食環境が子どもの食行動に与える影響を検討した。結果は以下のようにまとめた。
1. う蝕罹患率は33.8%を占め, 年齢が進むにつれう蝕に罹患している割合が有意に高かった。
2. う蝕予防法 (う蝕指導) について, 家庭および歯科医院においても同じ傾向にあり, 歯科衛生面の割合が高く, 食生活面の実践度は低かった。
3. 子どものう蝕は予防できると認識しているう蝕あり群の保護者 (60.3%) は, う蝕なし群 (72.3%) に比べ有意に低かった。
4. 子どものう蝕を予防できない・どちらともいえないと認識している保護者の理由として多かったのは, 遺伝的なもの, 歯の質が弱いなどであった。なお, 食生活が関与している認識は低かった。
5. 家庭の間食環境が, 子どもの不規則な間食行動を招き, う蝕を誘発しやすくしていることが明らかになった。
6. 自由記述からは, う蝕予防法や間食および食生活の重要性に気づいた。間食環境や間食行動の問題に気づいたなどがみられ, 問題点の発見, 改善への動機づけになったといえる。
7. 食に関する情報提供や学習の機会を求めている保護者のニーズが高かった。
子どものう蝕発生の予防には, 保護者の積極的な歯科保健行動や意識が関係しており, その行動を支援する地域とのかかわりが必要であることが示唆された。