抄録
モカル添加パンを毎日の食事の主食としてよりおいしいパンにするためにモカル添加量の適量を知り, パンの品質や性状およびその栄養成分について検討した.
1. パン生地は, モカル0%(無添加)では, 破断応力において最低を示し, 破断伸張歪は最大を示した. モカル添加量が増すにつれ徐々に破断応力は大きく, 破断伸張歪は小さくなった. したがって, モカル添加生地は, モカル添加量が増すにつれ, 混捏直後では, スムーズに水和されずグルテンの形成を遅らせ伸びの悪い生地になった. このため, 40%添加生地を適当とした.
2. モカル添加生地のpHは, 0%(無添加) 生地より高値を示したが, イースト菌の生育の最適条件のpH5.2前後で悪影響を与えることはないことがわかった.
3. 比容積は添加量が増すにつれ低値を示した. 調理操作上の生地の取り扱い易さを考慮すると, パンへのモカル添加量は40%が上限と考えられた.
4. モカル添加パンは, モカル添加量が増すにつれ, 膨化率が低く, 内相の気泡膜が厚くなる傾向があり, パンとして40%添加量が適当と考えられた.
5. 焼き上がり2時間経過後のパンは, 24時間経過後のパンより, 柔らかく回復力が良かった. 24時間経過後のパンでは, モカル添加量が多い80%添加パンの水分率が高かった.
6. 上表面では, モカル添加量が増加するにつれ, 僅かに焼き色が濃くなる傾向を示し, 内相では, 黄味が増加し, 大豆色を帯びた.
7. 官能検査の結果は, モカル添加量が多いパンでは, もどりの悪いことから, ねちゃつくと評価された. モカル添加60%以上は好まれなかったが, モカル添加40%が良好であった.
8. モカル添加パンの栄養成分は, 無添加パンおよび市販食パンと比較すると, たんぱく質, 脂質, 食物繊維, リン, カリウムなどの栄養素の含有量が多くなった.