日本食生活学会誌
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高齢者のQOLに果たす食生活の役割
居住形態とADLの違いから見て
大谷 貴美子杉山 美穂中北 理映南出 隆久饗庭 照美康 薔薇松井 元子山田 朋美恵比須 繁之
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2002 年 12 巻 4 号 p. 306-313

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抄録

70歳以上の在宅高齢者 (男性87名, 女性219名) を対象に, 聞き取り調査で, 本人の主観的QOLに食生活がどのように関わっているかを調べた. 対象者をADLと居住形態により, 独居高ADL群, 同居高ADL群, 同居低ADL群の3群に分類した. 質問項目を因子分析に供したところ, 5つの因子, すなわち「食事満足度」, 「ADL (Activity of daily living) 」, 「主観的QOL」, 「人間関係・生き甲斐」, 「安心感」が抽出された.
1) 主観的QOL得点は, 3群間に有意な差は認められなかった.
2) 3群ともに, 「主観的QOL」と, 「人間関係・生き甲斐」, 「食事満足度」, 「安心感」の間に有意 (p<0.01) 相関が認められた.
3) ADLの高い高齢者にとっては, 同居, 独居に関わらず, 食事は家族や友人とのコミュニケーションの場としての役割が大きく, ADLの低い高齢者の場合には, 食事内容そのものに関心が移ることが示された.
4) 高齢者の咀嚼スコアは, 「食物摂取」と「食事満足度」と有意な (p<0.01) 相関を示し, 高齢者のQOLを高めるには, 適切な口腔ケアも重要であることが示された.

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