抄録
飛粉を食材として利用する目的で, 超音波併用のエタノール処理の素材A, 非照射エタノール処理の素材Bおよび無処理の素材Cをそれぞれ添加したビスケットを製造し, その製品の性状, 成分, 食味特性並びに保存性について検討した.
1. 飛粉素材Aはビスケットの副材として小麦粉の10%まで添加できた.この焼成品は淡い茶褐色で, スプレッドファクター, 膨化率は無添加品とほぼ同等の形状を呈した.しかし, 口溶けに関与する吸水率は有意に増加した.
2. 物性特性では無添加焼成品に比べ, 素材Aの10%添加品は破断応力値が高く硬くなったが, 破断エネルギー値は若干小さく, もろい食感を形成した.
3. 官能評価では, 素材Aの10%添加品は無添加品よりも淡い茶褐色で有意に好まれないが, 味は飛粉独自の微妙な旨味を感じ, 総合的好みでは同等に好まれた.
4. 素材Aの10%添加品の成分は無添加品に比し, たんぱく質, 食物繊維と無機成分 (Fe, Ca, Cuなど) の含有量が多く, ビスケットの栄養特性の改善が期待された.
5. 飛粉の精製操作では, 照射した素材A添加は非照射の素材B添加や素材C添加より焼成品の風味 (除臭) 及び物性のもろさに影響を与え, 嗜好にも優れた評価が得られ, 精製に有利であった.
6. ビスケットを20℃ の暗所と明所48日間保存中のPOVは, 暗所保存では無添加区と素材Aの10%添加区ともにPOVの上昇は認められなかったが, 明所保存では48日経過後の値は対照区20.48meq/kg, 添加区23.02meq/kgとなり上昇が認められたものの, 食品衛生法の上限値50meq/kgまでは至らず, 油脂の変敗は認められなかった.