2016 年 28 巻 2 号 p. 35-43
ネパールには火葬場観光地が世界遺産パシュパティナート寺院内にある。なぜ火葬場は観光地になり得たのだろうか。アーリーのまなざし論では、非日常性が高いからだと説明がつくだろう。しかし、まなざし論では観光地になり得る条件を説明できても、なぜ観光地になったのかを説明できない。そこで本稿では、ソフトパワー論を分析視角としてネパールの国際関係に焦点を当てることで、火葬場が観光地として整備されたいきさつを考察した。その結果、パシュパティナートの活用方策にはネパール政府の外交方針と同じ論理が働いていると分かった。パシュパティナートにおける火葬の観光利用はインドに取り入る形で国際社会へ進出する方策として機能する。