2023 年 35 巻 1 号 p. 87-93
「新型コロナウイルス感染症等の影響による情勢の変化に対応して生活衛生関係営業等の事業活動の継続に資する環境の整備を図るための旅館業法等の一部を改正する法律案」は、新型コロナウイルス感染症及び宿泊サービスの両者を研究する上で、今後、観光学及び法学のいずれにおいても重要な基礎情報となる。2020年以降の新型コロナウイルス感染症のまん延において、旅館業は、自宅等で過ごす国民が必要最低限の生活を送るために不可欠なサービスとして事業継続が要請される一方、旅館業法第5条が厳格に規定する(刑事罰を伴う)宿泊拒否の禁止を背景に、優越的な立場を利用する一部の宿泊者の感染防止対策への非協力とまん延防止の両立に苦慮してきた。本稿は、行政文書開示決定により開示された厚生労働省の同法に係る立案担当者資料を綿密に分析し、同法の構造さらに宿泊拒否規定創設の是非を論じるものである。