2024 年 35 巻 2 号 p. 47-57
本稿の目的は、北海道美唄市の炭鉱遺産で開催された写真展を事例に、その土地で暮らした経験と記憶を持つ「有縁の観光者」のパフォーマンスが、ほかの観光者や観光地のイメージへ及ぼす影響を明らかにすることである。彼らのパフォーマンスは、ほかの観光者の鑑点を補助し、観光地のイメージを、過去を懐かしむ空間として再構築していた。これらのパフォーマンスは、地域社会の集合的記憶の集積に寄与するだけでなく、遺産に関する記憶や価値が表象され、変化していくプロセスである「遺産化」の一端に位置づけられる可能性がある。