2024 年 35 巻 2 号 p. 59-71
スラムツーリズムの観光者は、「覗き見」に関連する倫理的批判にしばしば直面する。本稿では、ケニア・キベラ地域のNPOツアーに参加した観光者が、倫理的批判にいかに対峙したのかを、消費者生成メディアに投稿されたレビューと、現地調査の結果をもとに明らかにする。観光者がスラム住民のたくましさを植民地主義的な視点に無自覚のまま肯定的に語る一方で、正しい地域理解や適切な寄付といったエシカル消費を呼びかけていることを明らかにする。同時に、こうした「倫理的」な観光経験がNPOの関係者自身が醸成するものであることを指摘し、スラムツーリズムが「倫理的」な観光経験として語られつつあることを提示する。