ガーデンツーリズム政策の補強を議論する上で、庭園都市として知られる城下町松代の伝統的な環境価値が注目に値する。一方、松代の伝統的な環境を調査した先行研究では、庭園から眺めることができる象山との借景関係について、ガーデンツーリズムに関連する論点に該当するが十分に議論されていない。そこで、本研究は、松代城下町から象山に向けられた視線を評価し、その結果から、庭園から象山が見られるようになった伝統的要因を明らかにすることを目的とした。庭園都市松代の伝統的な環境価値を踏まえ、本研究はガーデンツーリズム政策の課題に貢献しうる改善案を示した。
本研究の目的は、全国工場夜景都市協議会に加盟する12の自治体を対象に、工場夜景観賞スポットの特徴を明らかにし、工場夜景観賞の維持造成方法についての示唆を得ることである。分析のため、工場夜景観賞スポットという基本概念を、既往研究を基に観賞者、観賞者の視線、工場、観賞スポット、工場の周辺環境の5つの要素から構築した。この基本概念を用いて工場夜景を観賞することができる9つのスポットとして、工場敷地、建築物、公園緑地、港、道路、橋梁(道路)、船、電車、車の共通点と相違点を論じた。
1990年代初頭以降、EUの助成プログラムLEADERは、欧州の農村観光開発に重要な貢献を果たしている。本研究では、ギリシャにおけるLEADERの「ボトムアップ・アプローチ」概念と実相について調査・分析し、且つLEADERと内発的発展論、および新内発的発展論の文脈におけるギリシャの「ボトムアップ・アプローチ」の特性を示すことを目的とした。結論として、ギリシャにおけるLEADERのボトムアップ・アプローチの特性は、LAGが地域住民や事業者、そして自治体との日常的な相互交流を通じ、事業の発展に貢献しており、さらに現在は、新たな地域事業者間のネットワーク構築にも寄与していることである。
本稿の目的は、北海道美唄市の炭鉱遺産で開催された写真展を事例に、その土地で暮らした経験と記憶を持つ「有縁の観光者」のパフォーマンスが、ほかの観光者や観光地のイメージへ及ぼす影響を明らかにすることである。彼らのパフォーマンスは、ほかの観光者の鑑点を補助し、観光地のイメージを、過去を懐かしむ空間として再構築していた。これらのパフォーマンスは、地域社会の集合的記憶の集積に寄与するだけでなく、遺産に関する記憶や価値が表象され、変化していくプロセスである「遺産化」の一端に位置づけられる可能性がある。
スラムツーリズムの観光者は、「覗き見」に関連する倫理的批判にしばしば直面する。本稿では、ケニア・キベラ地域のNPOツアーに参加した観光者が、倫理的批判にいかに対峙したのかを、消費者生成メディアに投稿されたレビューと、現地調査の結果をもとに明らかにする。観光者がスラム住民のたくましさを植民地主義的な視点に無自覚のまま肯定的に語る一方で、正しい地域理解や適切な寄付といったエシカル消費を呼びかけていることを明らかにする。同時に、こうした「倫理的」な観光経験がNPOの関係者自身が醸成するものであることを指摘し、スラムツーリズムが「倫理的」な観光経験として語られつつあることを提示する。
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