日本救急医学会雑誌
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原著論文
救急搬送先病院の選定困難事案多発の原因についての検討
鈴木 昌堀 進悟
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2010 年 21 巻 11 号 p. 899-908

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抄録
目的:救急搬送先となる病院の選定が困難であった事案(選定困難事案)は大都市とその周辺都府県に頻発する。本研究の目的は都道府県別の医療にかかわる公的統計資料を用いて選定困難事案が多発する地域の特徴を抽出し,その原因を考察することである。方法:厚生労働省および総務省の公表資料から,医療資源および医療の利用状況に関する統計資料として,選定困難事案の発生割合,人口密度,人口に占める65歳以上と15歳未満の割合,人口10万人当たりの以下の指標;救急搬送人員,救急医療機関数,救命救急センター数,一般病床数,病院医師数,救命救急医数,初期臨床研修医数,1日あたりの平均外来患者数と新入院患者数,救急外来受診患者数,および時間外外来受診患者数,ならびに救急搬送に占める重症患者の割合を都道府県別に収集し相関分析と主成分分析で解析した。結果:選定困難事案の発生割合は人口密度と正の相関を認めた。人口密度の高い都市では救急医療利用者が多いものの軽症患者が多く,一般外来を受診する患者が少ないことから,受療行動が一般外来から救急外来へシフトしていると考えられた。また,都市では利用可能な医療資源に限界があることも示唆された。主成分分析では,救急医療需要を示す第1主成分と単位人口当たりの医療資源供給量を示す第2主成分が抽出された(累積寄与率は53.7%)。選定困難事案の発生率は第1主成分で0.60,第2主成分で-0.37の成分負荷量を示した。結語:選定困難事案の多発は,救急医療需要の増大と医療資源供給量の不足が要因と考えられた。都道府県別には東京都や大阪府で需要抑制が,埼玉県や奈良県のような大都市周辺府県で救急医療の供給増加がその対策と考えられた。
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© 2010 日本救急医学会
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