日本救急医学会雑誌
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症例報告
アカラシアによる気道閉塞:症例報告と文献レビュー
畠山 淳司武居 哲洋伊藤 敏孝竹本 正明
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2010 年 21 巻 7 号 p. 377-382

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抄録

アカラシアに伴う巨大食道により,気道閉塞を来した症例を報告する。77歳の女性が,突然の呼吸困難のため当院に救急搬送された。入室時の意識はGlasgow coma scaleでE3V1M4,吸気時喘鳴と奇異性の努力呼吸を認めた。肺胞呼吸音はほとんど聴取できなかった。血液ガス分析で,著明な呼吸性アシドーシス(pH 6.96,PaCO2 150mmHg)を認めた。上気道閉塞を疑い緊急喉頭内視鏡を施行したが,声門部までの気道に異常はなかった。胸部CTで最大径82mmと拡張した食道が,胸骨切痕周囲の気管を圧排閉塞していた。緊急気管挿管により,呼吸促迫と意識障害は速やかに改善した。過去の文献をレビューしたところ,37例のアカラシアによる気道閉塞症例を渉猟し得たが,本症例を含めそのほとんどが高齢女性であった。一般にアカラシアには,好発年齢や性差を認めないためその原因を考察したが,説明できる因子を指摘できなかった。急性呼吸困難を呈する症例の鑑別診断として,とくに高齢の女性ではアカラシアによる気道閉塞も念頭に置く必要がある。

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© 2010 日本救急医学会
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