日本救急医学会雑誌
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エンドトキシン誘発腸管麻痺の新しい測定法
二宮 宣文根本 香代岡村 忠夫鈴木 秀典山本 保博
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2003 年 14 巻 5 号 p. 241-250

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抄録

Lipopolysaccharide (LPS)はsepsisによる麻痺性イレウスの原因物質と考えられている。われわれは,モルモットがLPSに対して高い感受性を示し,摘出結腸縦走筋標本の収縮がLPSによって抑制されることを既に報告した。本研究では,意識下における無拘束モルモットの結腸縦走筋運動変化を連続的に観察・記録し,LPS投与による腸管麻痺の新しい測定法の開発を試みた。モルモットを麻酔下に開腹し,結腸紐に極小のforce transducerを逢着した。術後のモルモットは飼育ケージ内で自由に飲水・摂食させ,4日後にLPS (E. coli, O111:B4)を腹腔内投与し,結腸縦走筋運動をモニターした。また,背部皮膚に装着した温度計によりLPS投与後の体温変化を経時的に測定した。モルモットの腸管収縮運動は,長時間にわたり安定した記録が得られた。LPS投与後2-4時間でピークを示す特徴的な結腸縦走筋の弛緩反応が認められた。LPS投与による弛緩反応は,LPS投与濃度に依存していた。また,体温は腸管の張力とよく相関する変化を示した。以上の結果から,意識下無拘束モルモットの腸管運動の新しい測定法は,エンドトキシン投与による麻痺性イレウスを研究するための有用な方法であることが示唆された。

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