日本救急医学会雑誌
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MRI上,脳幹病変を有したびまん性脳損傷の検討
来院時における脳幹病変推測因子
柴田 將良松前 光紀下田 雅美石坂 秀夫白水 秀樹守田 誠司津金 隆一
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2003 年 14 巻 5 号 p. 251-257

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抄録

脳幹損傷はびまん性脳損傷例における最も重要な予後不良因子とされているのにもかかわらず,実際の臨床の場では搬入時に脳幹損傷の存在を推測することは困難なことが多い。今回,筆者らは画像診断として最も鋭敏かつ客観的に脳幹病変の評価が可能であるMRIを行い,それぞれの症例について,搬入時の全身所見,神経学的所見,CT所見などから多変量解析によりretrospectiveに脳幹損傷の推測因子を検討した。対象はびまん性脳損傷84例であり,受傷3週間以内のMRIで脳幹病変を同定し得た24例と病変を認めなかった60例を統計学的に比較検討した。各因子は打撲方向,全身所見としての来院直後の血圧,異常呼吸の存在,動脈血液ガス所見,神経学的所見としてのGCS,対光反射,眼球頭反射,角膜反射の有無,麻痺の有無,頭蓋内モニターの測定値は頭蓋内圧と静脈血酸素飽和度,CT所見については中脳周囲脳槽のクモ膜下出血(subarachnoid hemorrhage: SAH),鞍上槽のSAH,円蓋部のSAHの有無,基底核病変,視床病変,gliding contusion,脳室内出血,Traumatic Coma Data Bank分類である。MRI上の脳幹病変と相関したFisher exact testによる2変量解析上危険率5%以下の臨床因子すべてをロジスチック回帰による多変量解析し,来院時所見から脳幹損傷を予測し得る因子を選択した。結果として脳幹損傷の存在と有意に相関したのは対光反射の消失(odds ratio,以下OR: 2.269), CT所見としての円蓋部SAH (OR: 3.592),鞍上槽SAH (OR: 2.458), TCDB III型(OR: 11.062)の存在であった。さらに,これらの因子の根拠となる臨床病態に関し考察した。

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