日本救急医学会雑誌
Online ISSN : 1883-3772
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Polymerase chain reaction (PCR)法を用いたヒトサイトメガロウイルス感染症の迅速診断
救急集中治療領域での臨床応用
北河 徳彦手戸 一郎丸藤 哲牧瀬 博大川 洋平富樫 敦子稲葉 恵子
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1993 年 4 巻 1 号 p. 1-6

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抄録
ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)感染症に対するpolymerase chain reaction (PCR)法を用いた迅速診断法の意義を,他の診断法と比較して検討した。対象:免疫能を低下させる原因があり,臨床的にHCMV感染症が疑われた患者20名を対象とした。免疫能低下を疑った原因は多臓器不全,膠原病等によるステロイド連用,肝不全,多発外傷等であった。臨床的にHCMV感染を疑った疾患としては間質性肺炎が半数以上を占め,他は脳炎・腸炎・膵炎等であった。方法:各症例にPCR法を用いたHCMV-DNA診断法,ウイルス分離培養および血中抗HCMV抗体価測定(ペア血清)を行った。採取可能な組織については組織学的検索を行った。ウイルス分離培養または組織検索の結果をgold standardとし,PCR法と比較した。結果:PCR法はsensitivity 100%, specificity 82.4%, positive predictive value 50%, negative predictive value 100%であった。false positive 3例はいずれも抗HCMV-IgG抗体価が高値であり,潜伏感染中に起こり得る尿中へのウイルス排泄を検出した可能性あるいは検査段階での汚染が考えられた。抗HCMV-IgG抗体価は全例で高値を示したが,ペア血清で有意な上昇を示したものはなかった。またIgM抗体は全例陰性であり,血清診断が有用であった症例はなかった。結果報告までに要した平均日数は,ウイルス分離培養の18日,ペア血清抗体価の20日に対し,PCR法が8日と非侵襲的検査のなかでは最も短かった。結論:PCR法を用いた尿・血中HCMV-DNAの検出法は,specificityの問題が残るものの迅速・非侵襲であり早期スクリーニングとして有用であると思われた。
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