日本救急医学会雑誌
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クモ膜下出血発症後の早期搬入患者の病態と予後
奥地 一夫藤岡 政行藤川 朗西村 章小延 俊文宮本 誠司榊 寿右
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1996 年 7 巻 8 号 p. 379-386

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抄録

クモ膜下出血(subarachnoid hemorrhage: SAH)発症から専門的救急医療機関に搬入までの時間はさまざまであるが,再出血の危険性の高い4時間以内の病態の理解は重要であると考えられる。今回これら早期搬入患者をより早く搬入された1時間以内の患者群と1時間から4時間までの患者群に分類し,予後および再出血の頻度ついて検討した。対象は2年間に経験したSAH発症後4時間以内に当科に搬入された28例で,これらを発症から搬入までの時間が1時間以内の超早期搬入群(UE群)の13例と1時間から4時間までの早期搬入群(E群)15例の2群に分けて検討を行った。両群の来院時のHunt & Kosnik gradeはほぼ等しい分布を示したが,GOSで評価した予後はUE群でE群に比して有意に良好であった(p<0.05)。この理由としてUE群の平均年齢が若年(p<0.05)であるということ,またUE群では早期に鎮静剤の持続投与を受けることが可能で術前の大部分の時間が鎮静状態にあるため再出血の頻度が低く,これに対してE群では再出血が5例に生じており,再出血の頻度の差が予後に大きな影響を与えたと考えられた。また,来院までに要した時間に関係なく降圧を持続的に施行した症例(C群:18例)と間欠的に施行した症例(I群:10例)において,搬入後の再出血の発生頻度はC群で有意に少なく(p<0.05),持続法が再出血防止に間欠法より優れていた。以上のことより,SAHの予後向上のためには発症から専門的救急医療施設への搬入までの所要時間の短縮と専門外の医療施設でSAHを診断したときは,直ちに持続鎮静と降圧を行って転送することが重要と考えられた。

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