日本乳癌検診学会誌
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乳房超音波併用検診の精度管理
乳房超音波併用検診におけるプロセス評価
森久保 寛阿部 聡子
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2012 年 21 巻 3 号 p. 250-258

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抄録

検診の精度管理上,プロセス指標は重要である。平成18年度に策定されたがん対策基本法ではがん検診の質の向上を図ることが明記され,都道府県は検診実施機関のプロセス指標の報告を求めている。検診の最終評価(outcome)は死亡率減少効果等により示されるが,毎年の検診実施によるプロセス(過程)指標,すなわち検診受診率,要精検率,がん発見率,陽性反応的中度,早期がん割合,精検受診率などは毎年集計され,検診事業の質の検証に利用される。さらに,どのような検診をどの対象にどのように実施するかが検診の構造(structure)に相当する。このように事業の評価を構造,過程,結果に分けて評価する方法をDonabedian評価という。プロセス指標の把握は複数の施設間での情報交換を必要とし,個人情報保護の観点からさまざまな制約を受けるが,公衆衛生上の寄与という視点で運用されることが理解されるべきである。栃木県保健衛生事業団では,平成12年より超音波とマンモグラフィを用いた分離併用乳がん検診を県内の市町村の委託により実施している。分離併用検診では要精検率の高さが問題となる。超音波における要精検率の低減は過去画像比較読影システムの導入や血流情報,エラストグラフィ,あるいは動画情報の活用などにより実現されると思われる。さらに併用型検診ではプロセス指標の詳細な検討により各モダリティーの特性を知ることにより,総合判定の仕組みを改善して検診精度を高められることが期待される。

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© 2012 日本乳癌検診学会
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