日本乳癌検診学会誌
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Print ISSN : 0918-0729
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原著
乳がん検診の新しい診断システムの構築
野村 長久桑田 康典三好 和也甲斐 良樹折田 洋二郎村上 仁宇田 憲司保田 健太郎水田 昭文八木 正人藤岡 正浩中川 富夫金子 克彦池田 雅彦前原 弘江
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2012 年 21 巻 3 号 p. 280-284

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抄録

マンモグラフィは乳癌の診断に広く使われるようになった。福山市では,2007年より住民検診に対して,以下のように新しい診断システムを考案した。すべての検診を受診した女性に対し,視触診とマンモグラフィを併用すること,読影は二重読影で行い,かつ二次読影はマンモグラフィ検診精度管理中央委員会が認定したA判定医が必ず行い,診断結果が異なる場合は三次読影も行うこととした。このシステムを導入したことにより,要精査率7.7%,がん発見率0.43%および陽性反応的中度(positive predictive value: PPV)は6.0%と良好な成績が得られた。また,発見された乳癌の85.7%が早期癌であり,そのうちDCISは21.4%であった。しかし,新システムにおいても40歳代の検診精度は,要精検率10.3%,がん発見率0.25%およびPPV 2.6%とあまり効果的ではなかった。視触診による精度管理は,偽陰性率76.2%と重大な欠陥を有していた。さらに,マンモグラフィで所見がなかった場合のがん発見率は0.02%と非常に低値であった。新システムによる乳がん検診は非常に有効であったが,若年者の問題や費用対効果も踏まえ,今後さらなる検討が必要である。

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© 2012 日本乳癌検診学会
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