日本乳癌検診学会誌
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症例報告
検診乳房超音波検査にて発見された乳腺アポクリン癌の1例
荒川 奈緒美大塚 博紀大野 香原田 亜里沙菅野 荘太郎萩原 美桜杉山 迪子児玉 ひとみ
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2014 年 23 巻 3 号 p. 382-386

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抄録
乳腺アポクリン癌(apocrine carcinoma: AC)は全乳癌の0.5~2%程度とされ,稀である。検診乳房超音波検査(US)にて発見されたACの1例を経験した。50歳代後半,女性。視触診とUSの検診にて,視触診で左C領域に可動性あり弾性硬な約5 mmの腫瘤を触知,USで左1~2時方向に24×29×6 mmの比較的境界明瞭,扁平で分葉状の腫瘤を認め,その内部に豊富な血流と微細石灰化を疑う点状高エコーを認めた。マンモグラフィ(MMG)では,左U領域に構築の乱れを認めた。MRIやCTにて遠隔転移を認めず。針生検でACまたはアポクリン化生様変化を伴う浸潤性乳管癌が疑われた。左乳房扇状部分切除術およびセンチネルリンパ節(SN)生検を施行し,SNは陰性であった。最終病理診断はACであった。抗癌剤,残存乳房照射の後,無治療経過観察で2年経過するが,再発の兆候は認めない。MMGやUSでのACに特異的な所見については一定の見解を得ておらず,本症例も特徴的な所見とはいえなかったが,背景乳腺である乳腺症の所見が前面となっていることも考えられた。また,特に本症例のUS所見は腫瘤径縦横比が低く扁平で,境界が一部不明瞭なものの全体的には比較的明瞭な腫瘤のため,一見良性をも思わせる所見であったが,このような所見でもACは否定できないと考えられた。ACでのMMGやUS所見の多様性は,病理組織学的構造の多様性や背景乳腺によると考えられた。
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© 2014 日本乳癌検診学会
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