日本乳癌検診学会誌
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全国集計報告とプロセス指標設定について
がん登録推進法と乳癌検診の精度評価
辻 一郎
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2016 年 25 巻 1 号 p. 43-46

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抄録

がん検診の精度(感度・特異度)を評価するには,精度の高い地域がん登録データと検診受診者名簿とを突合して偽陰性例(検診で陰性と判定された後,定められた受診間隔の間に医療機関の外来で癌と診断された者)を把握することが必要である。乳癌検診の精度については,これまで宮城県がん登録を用いた研究が報告されているのみである。 一方,がん登録推進法の施行により,精度の高いがん登録が2016年から全都道府県で行われることになる。がん登録推進法は,がん登録を通じて,がんの罹患,診療,転帰等の状況をできる限り正確に把握するとともに,収集された情報の利活用と個人情報の保護の双方を重視することを基本的な理念としている。 がん登録データと検診受診者名簿との突合には匿名化されない情報を取り扱わなければならない。研究者がその作業を行おうとする場合,対象者の同意が必須となる。一方,都道府県が「自らのがん対策を企画,立案,または実施に必要ながんに係る調査研究」を行う際には,対象者の同意は必須とされない。そこで,がん検診の精度評価は,研究者よりも都道府県がん対策部署(担当課あるいは生活習慣病検診等管理指導協議会など)が実施主体となる方が望ましい。その体制の実現に向けて,本学会やがん検診関連学会が行政当局に働きかけるとともに技術面の支援を行うべきである。

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