日本乳癌検診学会誌
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次世代乳がん検診の夜明け――J-START の結果から個別化検診へ
費用効果分析からみた超音波併用乳がん検診の精度管理と個別化
大貫 幸二
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2017 年 26 巻 1 号 p. 30-34

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抄録

J-START によって,40歳代のマンモグラフィ検診に超音波検査を上乗せすると,感度が上昇することが示されたが,特異度は低下した。初回検診の結果という限定的な成績ではあるが,J-STARTの成績を用いて費用効果分析を行い,対策型検診に超音波検査を上乗せすることが妥当であるかについて検討した。分析には10万人の仮想コホートを動かすシミュレーションモデルを用いた。1救命人年あたりの費用はマンモグラフィ検診が118.0万円で,マンモグラフィと超音波検査の併用検診の174.8万円より効率的であった。感度分析を行ったところ,検診費用の増分を押さえ,総合判定などによって特異度を向上させると,超音波検査の併用検診の費用効果比がマンモグラフィ検診より良好となる可能性が示された。また,罹患率が1.36倍以上の集団に超音波併用検診を行うと,平均リスクの集団に対するマンモグラフィ検診の費用効果比より良好となった。日本人でも高濃度乳房(dense breast)は乳癌罹患リスクが高いとされており,高濃度乳房の多い40歳代に対して超音波検査を上乗せすることは,検査精度だけでなく費用効果分析の観点からも妥当であると考えられた。ただし,対策型検診に高濃度乳房対策を盛り込むのであれば,乳房の構成の評価基準や教育体制などを再検討し,それに基づいて日本人における高濃度乳房の診断精度や罹患リスクを再評価する必要がある。

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