日本乳癌検診学会誌
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次世代乳がん検診の夜明け――J-START の結果から個別化検診へ
基調講演:J-START の結果がもたらす意義
大内 憲明
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2017 年 26 巻 1 号 p. 4-7

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抄録

乳がん検診の基本はマンモグラフィであるが,高濃度乳房における効果は十分でなく,その限界が指摘されていた。そこで,われわれは2006年度から厚生労働省第3次対がん総合戦略研究事業・がん対策のための戦略研究「超音波検査による乳がん検診の有効性を検証する比較試験(J-START)」を開始した。40歳代女性を対象に,マンモグラフィに超音波を併用する(介入)群と併用しない(非介入)群との間でRCT を行い,プライマリ・エンドポイントを感度・特異度および発見率とし,セカンダリ・エンドポイントを累積進行乳がん罹患率とした。プライマリ・エンドポイントの結果,介入群は非介入群に比較し感度が顕著に高かったが(91.1% vs 77.0%),特異度は低下した(87.7% vs 91.4%)。がん発見率も高く(184[0.50%]vs117[0.32%]),早期がんが多かった(144[71.3%]vs 79[52.0%])。特異度が低下した理由は超音波効果の検証目的に独立判定したためであり,検診への導入にはマンモ+超音波の総合判定が望まれる。 J-START は,超音波検査の有効性を評価した世界で初めての大規模RCTである。最近,デンスブレストに関する報道が盛んであるが,米国でBreast Density Notification Law が半数の州で施行されるなど欧米も同じ状況にある。J-START はデンスブレスト対応として始めた研究であり,その検証は今後も続ける。一方で,高濃度の人に結果をどう伝えるか,伝えた後の受け皿をどうすべきかについて,国や関係学会と検討を行っている。会員の皆様には,日本発・世界初のJ-START 成果を活かし,女性を乳がんから救うために取り組んで戴きたい。

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