日本乳癌検診学会誌
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第32回学術総会/シンポジウム3 乳癌検診における被ばく
マンモグラフィの被ばく線量はどのように考えていくべきか
広藤 喜章
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ジャーナル 認証あり

2023 年 32 巻 2 号 p. 173-178

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抄録
マンモグラフィは放射線を利用した検査においても他と比較して独特の特徴がある。具体的には,乳房は放射線感受性が高く,特に局所的にX 線を照射されるため,放射線被ばくには考慮が必要とされる。さらに,乳がん検診では1年または2年おきに定期的に撮影が行われることが多いため,これらの要素を考慮する必要がある。 日本人の乳がん罹患推定数は2022年において,約9万4千人を超え,死亡推定数は1万5千人を超えると報告されている。乳がん検診は乳腺疾患の早期発見により死亡率を低下させることを目的としているが,マンモグラフィによるリスクの一つは放射線被ばくによる健康リスクである。 放射線による健康リスクは,等価線量や実効線量といった防護量を用いて評価されてきた。しかしながら,実効線量の使用にはリスク評価の対象やその不確かさが含まれており,またその扱いに制約があることも指摘されていた。このような背景の中,ICRP の新たな勧告では,組織反応を防止するために使用する線量値として吸収線量が最適であるとされている。また,実効線量の使い方には留意点も挙げられており,マンモグラフィのような局所的な不均等被ばくには適用すべきではないとされている。 本稿では,乳房のみに照射する検診マンモグラフィに関して考えるべき被ばく線量の概念やリスク評価についてまとめる。
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