抄録
HRTが乳癌スクリーニング画像診断の代表であるMMG像に及ぼす影響について検討した。HRT群 (298例) と非HRT群 (789例) のMMG像を比較し, 併せてHRT長期群 (134例) における同一人の経時的MMG像変化も検討した。MMG像の乳腺組織変化はWolfe分類から判断した。HRT群, 非HRT群のDY像の比率は, 49歳以下では差がなかったが50歳以上でHRT群において有意に高率であった (p<0.0001) 。閉経後からHRTを開始するまでの年数で両者を比較してみると, 11年以上経過してもHRTに反応し, HRT群のDYの比率は非HRT群より有意に高率であった (p<0.005) 。HRT長期群で経時的に同一人のMMG像変化を検討してみると, P2, DYの頻度が高く乳腺組織の退縮傾向は認めなかった。さらに分娩回数が多いものほどP2, DYの比率が高いことから, 分娩回数がHRTによる乳腺の反応性に影響を与えることが示唆された。
以上の成績から, HRT投与期間中は, 年齢に関らずHRTがMMG像に影響を及ぼすことが明らかにされた。したがってHRT症例における乳癌検診はMMGだけでなく, 視, 触診や超音波などの併用も必要と思われた。