日本乳癌検診学会誌
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日本の乳癌検診は乳癌死亡を減らせるか?
2025年の定量的な予測
飯沼 武
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2006 年 15 巻 1 号 p. 48-49

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抄録

日本では2004年から40歳以上の女性に対する2年間隔マンモグラフィ併用検診が開始され, 本格的な乳癌検診がスタートした。しかし, その受診率はまだ低く, とても乳癌死亡率を減少させることにインパクトを与えるには至っていない。一方, 欧米諸国におけるマンモグラフィ検診は対象女性の70%を超える受診率を誇り, すでに乳癌死亡の減少という形で検診の効果が表れている。
本研究では, 20年後の2025年までに日本人女性40~84歳の50%以上に2年間隔マンモグラフィ検診が普及すると仮定した場合に, わが国の乳癌死亡がどの程度減少するかを定量的に予測することを試みた。まず, 2025年の女性の人口と1998年の年齢別乳癌罹患率を使って求めた乳癌罹患数は全年齢で38,037人, 40~84歳で32,967人である。これに対し, 検診を実施しなかった場合には不介入群の死亡率として30%を仮定すると, 全年齢で11,411人の乳癌死亡が予想される。これに対し, 2年間隔のマンモグラフィ検診を40~84歳の女性に対して実施した場合の乳癌死亡を求めた。検診群の死亡率を17%と推定し, 対象の女性の100%と50%が受診したときの乳癌死亡数は, それぞれ5,070人と9,375人であった。不介入群に対する相対リスク (RR) は0.64と0.82, リスク差 (RD) は4,071人と2,036人となった。2025年までに厚労省の目標である受診率50%を達成する精度の高い検診を行えば, 乳癌死亡を18%減少させることが可能であることを示した。

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