簿記研究
Online ISSN : 2434-1193
財務報告の展開と簿記教育
原 俊雄
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2023 年 6 巻 2 号 p. 20-27

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抄録
本稿では,近年の財務報告の展開と簿記教育について,会計基準等の前提となる概念フレームワークと簿記教育との関係で,純資産概念と複式簿記導入法を取り上げた後,会計基準の設例が簿記教育に与えている影響について検討した。まず,わが国では純資産が従来の資本に取って代わっているが,英米では純資産は「資産-負債」の略語であり,「期首資本±資本取引±損益」で計算される資本とは異なることを指摘した。次に,簿記教育における資本等式導入法は,資産負債アプローチと整合的な導入法であるが,導入段階では試算表等式導入法の方が 望ましいことを指摘した。そして,財務諸表上の表示の説明のための設例が,帳簿上の処理にまで影響を及ぼしている例として,決算整理とすべき処理が取引時に行われている問題,オフバランスの評価勘定の減少という問題点を指摘し,決算整理と評価勘定は証憑に基づく記録を行う帳簿と財務諸表をつなぐ重要な役割を担っていることを主張した。
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2023 日本簿記学会
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