抄録
〔要旨〕症例は50代,男性。二人組に襲撃され,会陰部を中心に複数箇所を刃物で刺され救急搬送となった。来院時はショックバイタルであり,臀部の創は下部直腸を貫通して尿道断裂をきたしていた。直腸はほぼ半周にわたり全層性の壁損傷を認めた。また,両側内腸骨動脈からの出血を認めたため,経カテーテル的動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization;TAE)を先行した。バイタルサインが安定したのち手術室へ搬入し,尿道断裂および陰囊切創に対して泌尿器科が,皮膚切創に対して整形外科が手術を行った。外科は審査腹腔鏡で腹腔内の損傷がないことを確認した後に,S状結腸で人工肛門造設を行った。会陰損傷は複数臓器の損傷をきたすため,正確な外傷の評価および複数科による総合的な加療を要する。