抄録
〔要旨〕症例は58歳女性の透析患者。下腹部痛を主訴に当院を初診し,腹部CT検査で骨盤内に遊離ガスを認めたため,下部消化管穿孔の診断で臨時手術を施行した。鏡視下に下腹部中心の高度な炎症所見を認めたが,大腸に異常を認めなかったため小腸穿孔と診断,病変と疑わしき小腸を部分切除した。術中に切除腸管の穿孔部位を確認できず,再度腹腔内を詳細に観察したところ,左卵管基部の穿破部位とそこからの排膿を認めた。卵管卵巣膿瘍穿破による汎発性腹膜炎の診断で洗浄ドレナージを施行した。腹腔内遊離ガスを伴う汎発性腹膜炎においては,本疾患に起因する腹膜炎の可能性も視野に入れるべきである。