抄録
〔要旨〕近年,高齢者の外傷性肋骨骨折に対する治療戦略として外科的肋骨固定術(surgical stabilization of rib fractures;SSRF)の増加がみられている。2017年4月~2023年8月に当院でSSRFを行った39例を対象として診療録ベースの後ろ向きコホート研究を行い,80歳未満と80歳以上の2群間で患者背景や手術関連項目,術後合併症の頻度,治療成績に差がみられるかを比較検討した。80歳未満は29例,80歳以上は10例であった。80歳以上群は,80歳未満群と比べて有意に胸部単独症例が多く,全身の外傷重症度は低かったが,手術関連項目や術後合併症の頻度,治療成績に両群で差はみられなかった。筆者の施設症例と適応下においては,高齢者SSRF症例であっても術後合併症が増加することはなく,より重症度が高い若年症例と同程度の術後転帰が得られていた。