日本応用動物昆虫学会誌
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カイコの雌性生殖細胞に対するapholateの影響,特にその病理組織学的観察
須貝 悦治
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1967 年 11 巻 2 号 p. 66-70

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抄録

5令期の雌蚕にapholateを1頭当たり,300μgおよび500μgずつ経口的に投与し,産卵数と不受精卵歩合をしらべ,さらに生殖細胞の変化を病理組織学的に検討した。
5令期いずれの時期の投与でも,著しい産下卵数の減少と不受精卵の発現が認められたが,末期に比較して,初期および中期が特に顕著であった。
組織学的には投与48時間目頃より,栄養細胞と卵細胞の分化域に存在する細胞がピクノーシスを起こし,一時的に卵細胞形成が中断されるが,およそ120時間後には再び正常にもどるのが観察された。また投与後72時間頃より,5令期卵巣の大部分を占める分化後の細胞のうち,栄養細胞核が顕著なピクノーシスの症状を示した。これらの細胞の異常形態は,その後の時間の経過にしたがって,再び認められなくなるが,化蛹変態を境に栄養細胞,卵細胞ともに前後して崩壊消失した。これに対し,投与当時,栄養細胞が縮小し,卵細胞が発達して,包卵被膜細胞がその周囲に縦列する発育段階に達したものでは,初期の異常化も軽微にとどまり,化蛹後も形態的異常はほとんど示されなかった。また,5令期投与の場合に示される不受精卵は,卵細胞の核質の異常化よりも,むしろ栄養細胞の生理的異常が主因となって誘起されることを考察した。

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