抄録
トビイロウンカの吸害により病変した水稲葉身部の蛋白質,遊離アミノ酸,および糖の定量定性的変動を明らかにし,その原因を考察した。
分折の結果,トビイロウンカの吸害により黄変しつつある葉身部では蛋白質が減少し,遊離アミノ酸とアマイドが著るしく集積しており,蛋白代謝の動的定常状態がみだされ,分解的方向に傾いていることが明らかになった。その原因として,トビイロウンカが葉鞘部に集中寄生し維管束から吸汁する際に,根部で合成され葉身部へ補給されるアミノ酸類や蛋白代謝を制御するホルモン様物質を,汁液と共に奪取するためであると考えられた。また黄変した葉身部からは還元糖であるブドウ糖と果糖も多量に検出された。