日本応用動物昆虫学会誌
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カイコにおよぼす5-ブロモウラシルおよび5-ブロモデオキシウリジンの影響
I. とくに第1令の発育時期による差異
中島 誠
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1971 年 15 巻 4 号 p. 189-197

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抄録
カイコの第1令各時期における核酸塩基類似体の影響を比較するために,ヘテロ黒縞蚕およびヘテロ油蚕を用いて,第1日目,2日目または3日目に5-ブロモデオキシウリジン(BUdR)または5-ブロモウラシル(BU)を添食し,発育阻害の程度,死亡率および変異斑誘発頻度を調べた。
1) 致死および変異斑誘発に対するBUdRおよびBUの効果は,いずれも第2日目添食の場合にもっとも大きく,その他の時期には効果が小さかった。
2) 第5令期に変異斑の大きさを測定した結果,BUdR添食の時期が早いほど大きく,第1日目添食の場合は第3日目の場合の約2倍の大きさであった。これは第2日目に真皮細胞のDNAが倍加するためであると考えられる。
3) 添食Br量と添食14時間後のBr量とを定量して,BUdRまたはBUの留存率を調べた結果,第2日目および第3日目添食の場合は第1日目の場合よりも留存率が高く,またBUdRの留存率はBUの数倍も高かった。このことが障害効果は第2日目添食のほうが第1日目の場合より高く,またBUdRのほうがBUより高い一因と考えられる。
4) 第1令各時期にBUdRを添食し,その前または後にγ線照射(800R)を行ない,変異斑誘発に対する両者の相助効果を調べた結果,第1日目または第3日目は添食前照射の場合に,また第2日目は添食後照射の場合に相助効果がみられた。
5) 以上の結果にもとずき,これらの障害の原因はBUdRがDNAに取り込まれるためであると考えた。その理由は第2日目は真皮細胞などのDNA合成期にあたることと,DNA合成やγ線照射によってBUdRの取り込みが増大するといわれているからである。
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