抄録
すでに筆者は,これまで完全虫体のままでは,きわめて困難であった昆虫背脈管の脈動曲線の記録を,光電管(Photo-cell)を利用する方法によって,可能としているが,今回,Photo-cellの代りに硫化カドミウムセル(CdS-cell)を利用し,脈動曲線をさらに効率よく記録することに成功した。すなわち,ピックアップ部において,1辺にCdS-cellをそう入し,他の3辺に50K ohmの抵抗3こ(うち1こは可変抵抗)を用いるエレクトロ・ブリッジを形成した。背脈管の所定部位に一定光線を照射し,脈動による反射光線の強弱をCdS-cellで受光し,その電気抵抗の増減による電流の変化を増幅し,これをペン書きオッシログラフで記録したものが脈動曲線である。この方法によって,カイコなど数種の幼虫・蛹・成虫の背脈管脈動曲線の記録例を示し,これらの波形を考察したが,さらにCdS-cell利用法とPhoto-cell利用法との優劣を比較し,両者による曲線の特性にはほとんど差異はないが,前者は後者の14∼17倍の高感度をもつこと,ピックアップ部が小さく,電源乾電池の消耗が小さいなどの利点をもつことを明らかにした。