日本応用動物昆虫学会誌
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沖縄県に侵入したモンシロチョウの個体群動態
II. 1年間の調査からみた個体群動態の特質
伊藤 嘉昭崎山 正美長田 勝
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1975 年 19 巻 1 号 p. 29-34

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抄録
沖繩本島においてモンシロチョウの個体数は10月頃から冬にかけて増加し,12, 1月にやや減少したのち,3∼5月のあいだ増加を続け,6月ないし7月に激減する。この密度変化は死亡率の変化によって説明することが可能である。
夏期の激減の原因は卵∼1齢幼虫初期の死亡率の上昇病気と捕食による幼虫期・蛹期の死亡率の上昇,および寄主植物の不足によると考えられる。
日本本土におけるモンシロチョウの3大有力天敵のうち,アオムシコバチおよび顆粒病ウイルスは沖繩では発見されない。後者については,導入を考慮する必要がある。またアオムシサムライコマユバチは春から初夏にかけてしか発見されなかったが,これは夏期に高温障害ないし寄主不足によって個体数が激減し,回復までに半年以上を要するためだと考えられる。このため,毎秋の増殖放飼ないし夏の寄主の保証の方法を検討する必要がある。
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