日本応用動物昆虫学会誌
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昆虫背脈管における脈動数の変動経過
立花 観二
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1975 年 19 巻 2 号 p. 70-78

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抄録
筆者の考案による方法で記録した昆虫背脈管の脈動曲線について考察し,背脈管収縮活動の回数およびその様相の変化を追跡することが可能であることを明らかにした。
(1) 通常,幼虫の脈動は比較的規則正しいものと考えられているが,カブトムシ3令幼虫のはく動曲線において,7.2∼16.2secの停止相のあること,またそのひん度も停止相以外に毎分10∼19という変異のある例を認めた。
(2) マツカレハ蛹・成虫の脈動数に増減があり,急速相(蛹:平均73.6sec・毎分60∼86,成虫:平均74.9sec・毎分100∼200)→停止相(蛹:平均10.9sec,成虫:平均17.1sec)→緩徐相(蛹:平均46.7sec・毎分5∼40,成虫:平均44.8sec・毎分5∼30)などの3相を1単位とする経過パターンを示すことを明らかにした。これらのパターンは,日中の明・暗条件下,あるいは自然の明・暗条件下のいずれにおいても認めることができた。
(3) マツカレハについて,蛹化後の経過日数が短い時期には,停止相は存在せず,ほぼ規則的な脈動を示すことが例証された。
(4) マツカレハ以外の若干種の蛹・成虫においても,(2)に示したと同じ脈動数の変動経過を示すことが認められた。
(5) 一般に,体動を認めたのち,しばらくの間,脈動数およびその経過パターンの変化(急速相,停止相ならびに緩徐相のうちの1相の短縮や欠落)がみられ,各相の出現率や経過時間が変化する。
(6) 電極針を虫体に刺突することによる傷害artifactは認められない。
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