日本応用動物昆虫学会誌
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キイロコキクイムシの発育経過と再寄生
笹川 満広
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1975 年 19 巻 4 号 p. 237-242

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抄録

キイロコキクイムシTaenioglyptes fulvus (NIIJIMA)の発育経過および習性を適確に観察するために,アカマツ樹皮を2枚の塩化ビニール板で挾みこんだ簡単な飼育装置を用いたところ,全発育期間を通じて生育が可能であった。
まず,雌成虫による母孔形成の過程を経時的に明らかにし,正常な横平孔を形成するためには蛹室内で羽化後数日間の後食が必要であることがわかった。交尾は侵入孔に接した交尾室内で行われ,雌は数日間の産卵前期間を経て,交尾室付近で2∼4回に分けて計20個内外の卵をルーズな卵塊として産みつける。産卵数は母孔の長さや雌成虫の生存日数が長いほど多くなる。ふ化幼虫の食入部位は不規則であるが,母孔の両端近くから始まるのが通例である。幼虫は2令を経過し,20日内外で老熟し,蛹室を作る。蛹期間は約1週間である。
最適生息密度よりも高い寄主では,かなりの個体が母孔形成および産卵を中止して寄主から脱出する。そして適当な寄主と密度条件が満たされれば,脱出前よりも長い母孔を作り,再交尾ののち産卵を続けるので,1雌あたりの総産卵数が増加する。したがって,本種の寄主脱出と再寄生現象は寄主内密度調節とともに個体数の増大をもたらすという生態学的意義がある。

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