日本応用動物昆虫学会誌
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ウコンノメイガの生態に関する研究
田村 市太郎山内 昭
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1958 年 2 巻 1 号 p. 24-32

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抄録

1) この報文は新潟県高田地方におけるダイズ害虫ウコンノメイガSylepta ruralis SCOPOLIについて,防除を主眼とした各種生態場面の研究を記述した。
2) 普通年における誘殺灯に対する成虫飛来は7月上旬から増加して中旬に最高を示し,下旬に向かって減少する。飛来成虫の性比は7月上旬には若干低位にあるようにみえるが下旬にかけて増加傾向となり,8月上旬には再び低下するようである。圃場での卵塊数消長は飛来成虫の消長とかなりよく一致している。
3) 株当り卵塊数は7月7日調査では3以下であるが,11日には12までとなり,21日には24を数えるものをみる。1葉当り卵塊数は14までを数えるが,1卵塊が最も多く,2∼3卵塊がこれにつぐ。1卵塊内の卵数は1∼2卵が最も多い。
4) 日別性比と卵塊数との間には1%有意水準においてγ=0.8144 (1953年)および5%有意水準においてγ=0.5392 (1954年)の相関をもち,日別性比をxとすればy=1.62x-83.15及びy=0.97x-52.95から圃場内の株当卵塊数が推察できる。日別誘殺数をxとした場合には1953年は1%有意水準においてγ=0.7834およびy=60.60-0.33xを算出できるが,1954年には全くこの関係がみられない。
5) 卵期間は産卵最盛期卵では5日前後である。幼虫は6令を経過し,各令期間は雌ではそれぞれ平均2.6, 3.0, 2.0, 2.6, 3.2および4.4日,雄では3.3, 2.7, 2.0, 2.7, 3.2,および3.4日である。蛹期間は雌雄とも約9日とみられる。
6) 卵塊数の品種間差異から供試品種を多卵塊数順位に群別すると,I.新4号,II.赤莢ほか3品種,III.出来過ほか5品種,IV.改良祇園坊と石原,V.霜被となるようであるがIIからIV間には年次変動もあって厳密なものとはいえないようである。また,卵塊数は開花期が産卵最盛期に当る品種に多く,さらに,葉数が多く,草高や立体指数の高位を示す品種に多い傾向がうかがえる。
7) 7月中旬おにいて,暗箱をかぶせて5日間の遮光処理を行ったダイズ株は,曝露後4日間の産付卵塊数が,同期間における無処理株の半分に減少している。これは,光合成の低減によるダイズ体内の生化学的物質との関係における産卵感応の問題を示したものではあるまいか。

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