抄録
1) 酵素反応液にドクガの毒針毛を加えて,反応処理を行い酵素による毒物の分解作用について調べた。
2) pepsin, trypsinで反応させた場合には皮内反応が陽性を示し,毒性は消失しない。これに対しlipaseで反応させた場合には,酵素濃度5∼10mg/cc,反応時間60分,温度38°C処理で皮内反応は陰性を示し,毒性は消失したことが明らかである。
3) trypsinとlipaseの等量混合液中で反応処理を行った場合は,lipase単用の場合と同じ結果を示し,lipase作用の変らないことがわかった。
4) lipase反応液は,100°C 10分の熱湯処理で容易にその酵素作用を失う。
5) 以上の結果から毒物の主体はlipaseによって分解される物質と考えられる。