日本応用動物昆虫学会誌
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東北地方における1969年のアワヨトウ第2回多発生の原因に関する考察
奥 俊夫小山 重郎
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1976 年 20 巻 4 号 p. 184-190

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抄録

1. 東北地方における1969年のアワヨトウ第1回発生は少なく幼虫の集中発生は秋田県南部の1地点に認められたのみであったが,第2回発生は激甚で,集中発生地点は40数個所に達し,各県でかなりの被害を生じた。第1回に比較して第2回発生が非常に激甚であったことから,第2回多発はこの地方外から成虫群が移動侵入したことによって起こった可能性が大きいと考えられた。
2. 地上の風向風速観測値,ならびに地上及び850MB面天気図を検討した結果,7月27∼28日は中国大陸東北区の吉林省方面から北海道東部に向かって急速に東進した低気圧があり,その南側上空に生じた強い西風によって成虫群が運ばれ,28日夕刻の寒冷前線通過時にその多くが東北地方に着地した可能性があることが判明した。
3. 秋田市及び岩手県安代町細野における成虫の糖蜜誘殺では,6月中旬から7月中旬までアワヨトウは全く認められず,7月28∼29日の夜に初めてアワヨトウがトラップに入り,しばらく誘殺が続いた。細野では誘殺数が極めて多く,この成虫群の産卵によると思われる幼虫の集中発生が起こった。これらの事実も28日夜に成虫群が飛来したと言う推測を支持するものであろう。
4. 1969年第2回の幼虫集中発生地点が奥羽山脈の西側平坦地に広く分布したことも成虫群が西岸から侵入したとこを示唆する。また,成虫群の一部は東西に走る溪谷沿いに移動し,さらに奥羽山脈の低部を越えてその東側に侵入した形跡が認められたた。

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