日本応用動物昆虫学会誌
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クロルジメホルムのカイコ幼虫に対する摂食阻害作用
中牟田 潔斎藤 哲夫
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1977 年 21 巻 3 号 p. 158-162

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抄録

カイコ5令2日目の幼虫を用いてクロルジメホルム塩酸塩を桑葉浸漬,幼虫へ塗布・注射処理し,おのおのの摂食阻害率を求めた。3つの処理法のすべての場合に明らかに摂食阻害作用がみられ,桑葉浸漬では10ppm以上,塗布・注射処理では100ppm以上で顕著な摂食阻害作用がみられた。しかし3つの処理法のいずれの場合にも,使用した濃度では死亡する個体はみられなかった。
また,各処理区のカイコ幼虫の摂食行動を注意深く観察した結果,いずれの処理の場合にもカイコ幼虫は口器を動かすが桑葉を避けてシャーレのふちへ移動し,桑葉に一度も食いつかないことがわかった。さらにクロルジメホルムをろ紙に処理し,25°Cで2時間くん蒸した後にカイコ幼虫をとり出して新鮮な桑葉を与えても,上記と同じ摂食阻害作用がみられた。
以上の結果から,クロルジメホルムのカイコ幼虫に対する作用は単なる味覚や嗅覚にもとづく摂食阻害作用ではなく,摂食または食物選択に関する何らかの機能を阻害することによりひき起こされるものと考えられる。

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