抄録
5,10,15,20,25°Cでキクヅキコモリグモ,コサラグモ,アオバアリガタハネカクシ,コナガゴミムシのツマグロヨコバイ老熟幼虫に対する日当たり攻撃頭数と捕食臨界温度を推定した。10°C以上ではコモリグモが捕食能力において他の3種より格段に優れていた。前2種では5∼10°Cでも捕食活動が認められた。
冬期地表面の日平均気温は地上1.2mのそれより平均7°C高く,コモリグモの捕食臨界温度(5.2°C)をほとんど下廻ることがないので,冬期中も捕食活動が行なわれていると考えられる。
他方,冬期休閑田に方形枠を設け,1週間毎の調査からコモリグモ,コサラグモ類,ハネカクシ,ゴミムシ類のそれぞれの延べ存在頭数とヨコバイ消失数間の重回帰分析を行なった結果,コモリグモがヨコバイ幼虫の死亡に最も重要な役割を果たしていると推察された。
1月下旬から3月下旬の間のヨコバイ消失数は,コモリグモの存在しなかった枠のY=3.7に対し,存在した枠でY=19.5と格段に大きかった。
コモリグモ延べ存在頭数とヨコバイ消失数の関係から,コモリグモ密度とヨコバイ消失数の関係式を得,模擬計算から,冬初期のヨコバイ密度が200頭/m2前後では,コモリグモ初期密度5頭/m2のとき越冬後ヨコバイ密度はほぼ半減するという結果を得た。