抄録
小笠原諸島父島において,誘殺剤によるミカンコミバエの抑圧防除の評価を行うための基礎的データを得る目的で,一定面積内に架設するトラップ数や放飼数を変化させて,効率的なトラップ密度を推定した。
その結果,放飼虫の再捕率はトラップ密度がヘクタール当たり1-9個の範囲では直線的に増加した。しかし,ヘクタール当たり15個という高密度の場合とヘクタール当たり9個の場合の再捕率に差はなかった。そのため,ヘクタール当たり9個がトラップ密度の飽和点と考えられ,本種根絶のためのメチルユージノールベイト(テックス板,ひも)投下の密度もこれに匹敵するものが望ましいと考えられる。なお,この場合のトラップ間隔は33mである。
捕獲率Rは,3月から8月まで20%前後で時期的な差は明確に認められなかった。また同期間中,顕著な密度の変動にもかかわらず,捕獲率間に差は認められなかった。