日本応用動物昆虫学会誌
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標高が異なる地点のシロモンヤガの発育の比較
奥 俊夫小林 尚
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1985 年 29 巻 4 号 p. 270-277

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抄録

岩手県中部の種々の高度の地点から採集したシロモンヤガを,16時間照明を行い,12.5∼30°Cの範囲内の種種の定温下で継続飼育し,その発育を相互に比較するとともに,北海道十勝地方の低地産の系統とも比較した。
1) 各発育段階における発育零点は7∼8.5°Cの間にあり大差がなかった。卵はつねに正常にふ化したが,幼虫および蛹は30°Cで多少とも死亡した。
2) 岩手県高地(1,250m)産の1化系統は,これ以下の高度に広く分布する2化諸系統よりも発育期間が長かった。北海道芽室産の2化系統の発育期間は上記各系統より概して短かった。発育の差はとくに幼虫および蛹において顕著であった。
3) 岩手県中部の種々の高度地点で得られた2化性諸系統間では発育期間に顕著な差がなく,産地の高度に対応した変異は認められなかった。
4) 蛹重は一般に高温域で明らかに低下した。岩手1化系統の蛹重は低温域では2化系統にほぼ匹敵したが,高温域における低下がいっそう顕著であった。北海道2化系統は岩手2化諸系統よりもつねに軽量であった。
5) 北海道2化系統の発育が早いことおよび岩手県の高地に1化系統が存在することは,それぞれの産地における発育有効温量が少ないことと関係づけて説明できた。
6) 岩手県中部の2化諸系統間に産地の高度に対応した発育の変異を生じない理由を,成虫の局地的移動と関連して考察した。

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