日本応用動物昆虫学会誌
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ガラス室栽培ブドウにおけるカンザワハダニと天敵の越冬生態
芦原 亘井上 晃一刑部 正博逸見 尚
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1987 年 31 巻 1 号 p. 23-27

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抄録

ガラス室ブドウに発生するカンザワハダニとその天敵類の越冬場所と越冬後の増殖場所を岡山市一宮と果樹試験場安芸津支場内(広島県豊田郡安芸津町)で調査した。
カンザワハダニはガラス室内ではブドウの落ち葉や枯れ草,敷きわら,ブドウの粗皮下で越冬していた。越冬中の天敵としてはケナガカブリダニ,ヘヤカブリダニ,ミチノクカブリダニ,コブモチナガヒシダニ,オオヒメグモが発見された。これらは落ち葉や枯れ草,敷きわらなどから採集されたが,樹上で越冬しているものはなかった。
加温または保温後の調査では,5室のうち保温開始8日目のガラス室1室の粗皮と敷きわらからカンザワハダニの生存個体が発見された。その他のガラス室のブドウからは生存個体がほとんど採集されず,雑草や間作の作物にカンザワハダニの増殖個体が認められた。天敵類は発見されなかった。また,ハダニの越冬個体を鉢植えのブドウに接種し加温した場合,22日目には鉢内の雑草に寄生している個体が見られたが,ブドウにはまったく認められなくなった。したがってカンザワハダニの室内での越冬個体は活動開始後すぐにブドウに寄生することはなく,雑草もしくは間作でいったん増殖したものがブドウに移動して被害を及ぼすと考えられる。

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