抄録
従来中国に産するとされてきたクリの堅果の害虫Cydia splendana HÜBNERはサンカクモンヒメハマキC. glandicolana (DANILEVSKY)およびクリミガC. kurokoi (AMSEL)が誤って同定されたものであることが判明した。中国に産するこれら2種の成虫・幼虫の形態を記載するとともに,生活史,分布の知見を簡単に記述した。これら2種のうちサンカクモンヒメハマキのほうが,中国においてアマグリへの優先加害種のようで,現在まで著者らが調査したかぎりでは植物検疫の際,発見されるのはすべてこの種であった。植物検疫上必要なこれら2種の幼虫態での識別は老熟幼虫胴部の色彩,硬皮板の着色状況,頭部の刺毛AF2とP1との位置関係を調査することにより可能である。中国にはCydia属2種のほかに,クリの堅果に食入するシンクィムシ類として,クリノミドリシンクイガEucoenogenes aestuosa (MEYRICK)およびモモノゴマダラノメイガConogethes punctiferalis (GUENÉE)が分布している。これら4種の中国および近隣地域での加害状況を概観し,幼虫の検索表を付した。