抄録
1981年から1985年まで岡山県内で,ニカメイガにおける交信攪乱法による防除効果を検討した。
1) 越冬世代成虫に対する交信攪乱法については,成虫のおもな発生場所が水田外であり,防除効果は,処理方法を改善しない限り,十分期待できないものと考えられた。
2) 第一世代成虫に対する交信攪乱法については,蒸発速度を高めることによって,防除効果が期待できる。
3) 交信攪乱法に用いるディスペンサーは封入するポリエチレン細管の壁幅を厚くすることによって,蒸発速度を長期間安定化できた。
4) 交信攪乱効果は,圃場段階では,Z-11-HDAL単独と3成分とは大差なく,ニカメイガの発生量や蒸発速度の高低が影響するものと考えられた。すなわち,少発生時には約50mg/10a/日でよいが,多発生時には100mg/10a/日以上の蒸発速度が必要であろう。
5) 交信攪乱法の処理規模は,極端な大発生でない限り,50a以上であれば十分効果が期待できる。
6) 高い防除効果を得るには誘引阻害率が100%,「つなぎ雌」での交尾阻害率が90%以上であることが必要であると示唆された。
7) 処理前の被害程度と処理後の被害程度との相関は対照区で高く,処理区では低かった。これは交尾率や卵塊数との関係から交信攪乱処理に起因していると判断された。